敷地は東京都世田谷区の閑静な住宅街に位置する。比較的小規模な敷地で、道路に面する北側以外を隣家に囲まれているため、日照の確保が一番の問題となった。

 建主夫婦は樹木のある単独の中庭を要望していたが、限られた面積の中でより多くの外部空間を感じることができるように、南北に伸びる玄関アプローチに庭としての機能をもたせる構成とした。敷地奥に設けた玄関に通ずるよう、幅1.2m×奥行き約10mの細長いアプローチ通路をつくり、その側壁表面はコンクリートの小叩き仕上げとした。南中前後に太陽の光が垂直に差し込むと、刻々と動く陰影が壁面に映り、狭い通路に豊かな表情を与える。風の抜けが良い通路に植えられた蔦やシダ植物は、年々とこの壁を覆い、都心の小さな空間にあっても多くの自然を感じることが出来るようになった。