軽井沢の小さな家
軽井沢の小さな家
Small house in Karuizawa
長野県北佐久郡
避暑地として親しまれている長野県軽井沢の山中に建つ小さな山荘である。休日になれば観光客で賑わう街並も一歩路地を入るとコブシやミズナラ、カラマツなどが自生する古くから続く別荘地の森である。苔むした浅間石の石積みが続く細い坂道を登った先に計画地はある。
古くからある別荘地に後から建物を建てる際、近隣から望む森の景色の邪魔にならないよう、また、一人あるいは数名が数日過ごすための最小限のシェルターとして、周辺の木立に紛れるようレッドシダーシングル葺きの二間四方という小さな箱を計画した。軽井沢は厳しい寒さと湿気の多い地域でもある。敷地は標高の高い南斜面で日当たりと風通しのよい地形ではあるが、RC造の深基礎、高基礎で対処している。
極小の空間に動作寸法と山荘ならではの所作を繰り返し想像し、心地よく過ごすための設えを丁寧に考え、キッチンと薪ストーブを備えた居間空間、戸で仕切った先にトイレ、シャワーなど必要な設備を過不足なく収めている。また梯子を上れば小屋裏に畳敷きの就寝空間と、ささやかな読書コーナーも設けた。山荘に求めるものは使い手によって異なる。寝袋で寝て、より自然に近いかたちで食事をし、最低限雨がしのげれば…という考えもあると思う。ただ、この山荘はその考え方とは全く逆のかたちをとっている。自然の中で静かな時間を過ごすなら小さくても心地よく質の高い室内空間でありたいと考え、触れた際にも質感のよい素材を選んだ。
また軽井沢は手の込んだ食事や大きな風呂といった機能の一部を観光地に委ねる、ある種、都市的な生活ができる別荘地でもある。そのためこの山荘は別荘でありながら大仰な準備もなく日常の延長として気軽に使うことができる。大きな別荘を計画して風景を改造するのではなく、小さな箱を森の中にちょっと置かせてもらう感覚。そんな場所に身をおく、環境と一体となった心地さよさを感じるための小屋である。
構造設計 | |
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主要用途 | 別荘 |
敷地面積 | 343.55㎡ |
建築面積 | 13.25㎡ |
構造 | 木造在来構法 |
規模 | 地上2階(1階+小屋裏) |
竣工 | 2024年1月 |